”人”を超える:鈴木宏昭先生を偲んで

 今年3月某日、鈴木宏昭先生の訃報を聞き、ショックが大きく、どうしたらよいか分かりませんでした。
 認知科学 30 巻 (2023) 2 号に、『認知科学』30巻4号にて追悼特集が組まれる旨の発表がありました。
 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcss/30/2/_contents/-char/ja

 和嶋が「人間の洞察(ひらめき)プロセス」に興味を持って大学院に入学した時、その先頭を走っていたのが鈴木先生でした。学会・研究会やその後の打ち上げ、研究内容はもちろんのこと、いろいろなお話をいただきました。
 ある時、お弟子さんとお話しているのを横で聞いていたのですが、その内容は、「洞察できる人とできない人って感じで、ひらめきやすい人とそうじゃない人がいる感じがする。でも、その”人”を超えたいよね。」というものでした。洞察のプロセスをしっかり明らかにすることで、ひらめきを、特定の人の物からみんなの物にしたいよね、ということかなと思って聞いていました。
 その後、今に至るまで、和嶋は何かを考えるときは常に、鈴木先生が明らかにした洞察プロセスを意識するようにしています。和嶋の主観評価ですが、ひらめきやすくなったと感じていて、”ひらめかない和嶋”が”ひらめく和嶋”になった、鈴木先生が目指していた”人”を超えたサンプルになれたかも、と思っています。鈴木先生、ありがとうございます。

 「”人”を超える」、IRの分野でも重要だな、と感じています。「〇〇先生がいるからうまくやれる」というコメントを少なからず耳にします。そして、和嶋も、「そうだよなぁ」と思ったりします。でも、そこに留まっていてはダメとも思います。「うまくやれる〇〇先生」プロセスをしっかりと研究して、IRも”人”を超えることができるようにしないといけないと思っています。

 最後に鈴木先生とお会いしたのが、名古屋での日本心理学会の頃でした。「人工知能学会に出した論文、若い奴らから、”ロックな論文”だって言われたよ。」と、うれしそうに話していらっしゃいました。本当にかっこよく、ロックな研究者であり教育者でした。心よりご冥福をお祈りいたします。