過剰投資になりやすい大学IR基盤の注意点とは? -MJIR2022で発表した研究の背景-

11/11(金)~13(日)にわたって開催されたMJIR2022 第11回大学情報・機関調査研究集会にて研究結果を発表しました。
研究題目は「中小規模の大学が”Quick Win”を達成するための大学 IR 基盤の考察」ですが、この研究を行った背景を少しお話したいと思います。

私は社会人になって以来ずっとIT業界に身を置いており、ITの投資戦略やグランドデザインに関わるものからシステムの設計、構築、運用など様々な案件を経験をしてきました。
現在所属しているヴェルク株式会社にて大学IRに関連した案件が本格化したのは2016年頃からですが、様々な大学の方たちとお話しているうちに大学におけるIT全般に関して民間企業とは少々異なる状況が気になるようになってきました。
当然、全ての大学に当てはまるわけではありませんが、大学における業務とITをテーマに箇条書きしてみようと思います。

  • ITの戦略的投資判断やその助言をする専門的な立場の人材(CIOやCIO補佐)が不足しているケースが多い。
  • 細かな作業や業務に関しては職員でカバーして解決するという方法がとられやすく、大学IRなどの従来存在しなかった比較的新しい業務に対しては現場における負担感が更に増している。
  • 上記により業務が属人化しやすい構造になっており、サイロ化を起こしやすくなっている。
  • 業務とITが一体化した業務改善や業務効率化に対する推進力がトップダウン/ボトムアップの双方において弱いことが多い。
  • システムベンダーによるパッケージ導入やシステム開発は、大学側の既存業務にあわせる形でカスタマイズされることが多く、前述のCIO人材の不足なども含めベンダーロックインを招きやすい状況を作っている。

大学IRで必要とされるデータは種類が多い一方、それぞれのデータの持ち主は(IR担当部署ではなく)外部の各部署という状況で、大学IRに必要なデータを集約したIR基盤を構築する案件は非常に難易度の高いものになっていると考えています。
上記で列挙したような状況も重なり大学IR基盤は過剰投資を招きやすくなっており、特に経営リソースの限られている中小規模の大学にとっては大きな課題です。
このような背景より今回の研究発表に至りました。

MJIR2022の発表資料は下記より参照可能です。ご興味のある方はご覧ください。
MJIR2022発表用資料

私は会場での発表となりましたが本発表に共感いただいた教職員の方々もいらっしゃったようで、発表後に様々な情報交換をさせていただきました。

更にIRI Lab.の研究成果を活用した大学IRダッシュボードサービス「IRQuA(イルカ)」の発表もMJIR2022出展企業として行いました。
実は本研究テーマと地続きな側面もありますが、こちらについても後日記事化したいと思います。